ぽてばす!

無能


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東南!板挟み生徒会! ~体操着編~

一万字弱の小説です。
あと数時間で提出するものです。
馬鹿さ加減に拍車がかかってきた気がします。
やっと俺の調子でてきたかなw
暇な人は読んでみたら時間を無駄にできると思う。


「諸君! 我々は今こそ立ちあがらなければならない!」
気持ちのよい秋晴れの下、我が校の生徒らは思い思いに登校していた。俺もそのうちの一人、暖陽高校二年、大原宏樹だ。さて、校庭の柵沿いに歩いていると見えてくるのは校門……のはずだったが、その校門前で男がダンボール大の台に立って演説しているようだ。
「……ので、今こそ我々は立ち上がり、この悪しき風習を取り払わなければならないのだ!」
主に男子に囲まれて何か大それたことを言っているのは、俺の幼馴染であり、同じクラスでもある鈴川総二郎のようである。大柄でスポーツ刈りで一見するとスポーツマン風情だが中身は変人変態の濃縮還元120%ジュースみたいなやつだ。やつは大げさに身振り手振りを加えながら何かを喋っているが、そのたびにメガホンが口から外れるので、まだ若干遠くに居る俺には時々何を言っているのか聞こえない。どうせ大したことは喋っていないだろうとは思うが、いち親友というか、いち保護者というか、いち防波堤としては、発言の内容によっては台から引き摺り降ろし、教室まで引っ張って行くのが俺の役割だろう。
「よー! 宏樹! おっはあああ!」
こちらに気づいた総二郎がメガホン片手にこちらに手を振る。こちらに視線が集まる。何やらひそひそ言われているような気もする。恥ずかしいのでやめて頂きたい。空気を読んで下さい。
「なんだ、朝から応援演説にでも駆け付けてくれたのか!」
「内容も知らずに朝から駆け付けるかよ」
そういえば一つ忘れていたことがある。この総二郎という奴はこの暖陽高校の南生徒会会長であった。
そして、もう一つの生徒会である東生徒会と競い合って決められた時期に採決を取り、新たな学校の校則を決めるという珍しい校風が我が暖陽高校にはある。
この南と東なのはわけがあって、我が校舎はL字型に折れ曲がっており、その両端、校舎の南側と東側に生徒会室を構えていることに由来する。こいつはたしか男子の表を集めて当選した男子代表みたいなものだったはずだ。ちなみに女子からは一桁票しか入らなかったとのもっぱらの噂だ。
「で、次の規約選挙では何の校則を制定しようとしてるんだ?」
「よくぞ聞いてくれた同志よ!」
まだ聞いてないのに勝手に同志扱いされた。
「これからまた演説するからここで聴いていてくれ」
そういうとメガホンを片手にまた登校中の生徒らに向かって演説を始めた。
「俺は南生徒会会長! 鈴川総二郎だ! 今こそ我々はこの悪しき風習ジャージから脱却し! 体操着にブルマを復活させなければならないっ!」
は? いまなんつった?
「ブルマこそが体操着の中の体操着! その洗練された至高の体操着ブルマこそ我が校の体操着に相応しい!」
大真面目に、この大馬鹿は言いのけた。
ブルマ? 復活? 至高?
状況が飲み込めない。と、後ろからドタドタと男子生徒が走ってきた。
「ぬ、抜け駆けとは卑怯だぞ! 鈴川!」
息を切らしてやってきたのは同じクラスの東条大和。黒縁の丸眼鏡がずり落ちている。品行方正、成績優秀、運動音痴、と綺麗に三拍子揃った優等生である。男にしてはやや長めの髪がワックスで無造作に纏められている。能力や生活態度に問題はなし、やや細身で長身、総二郎とは逆に女子からの票をかっさらって東生徒会会長になったのがこの男である。
「ふっふっふ……遅かったな東条! もうそろそろ電話してやろうかと思ったぞ!」
「嘘つけ! もうホームルームが始まるだろ! というか演説は明後日から開始すると約束したじゃないか!」
「政治戦略は常に騙し騙されよ!」
「適当なことを言うな!」
何やら言い争っているが……。話を聞けそうになかったので、言い争う二人を置いて先に教室に向かうことにする。

その日は休み時間ごとに二人で言い争っていて、二人とはまともに会話できなかった。
「大原君、ちょっといいかい?」
東条が話しかけてきたのはその日の放課後だった。そこから俺と東条は東生徒会室に向かった。生徒会室には他に誰も居ないようだ。
「で、何のようだ?」
こいつとは高校一年からの付き合いだ。席が近くなったときに仲良くなって以来、時々総二郎とかを交えて遊んだりした。今もクラスが一緒なのでわりと良く遊ぶ。
「鈴川が動き出したのはもう知っているね?」
彼の目は真剣そのものだった。
「ブルマを……復活……とかだったような……」
にわかには信じがたい、信じたくない話なので、言葉がつまってしまう。胸が熱くなる。
「ぁあ、鈴川は何もわかっていない……」
彼の眼鏡の光の反射が鋭さを増す。俺は唾を飲むしかできなかった。
「ブルマなど、前時代的にも程がある……そう、思わないか……?」
こちらの意見を仰いでいるようだが、俺は首を縦にも横にも振ることができなかった。脂汗だけが静かに首から胸に流れ落ちる。
「これからの体操服はブルマではなくスパッツこそが王道にして至高。そう、思わないか?」
まじめだった。総二郎とはほぼ対極に位置する彼の瞳は真剣そのものだった。故にその発言レベルが総二郎と同程度ということに気づくのに数秒のタイムラグが生じたのは無理もないだろう。
「あ、阿保か!」
何を真面目な顔をしてブルマだのスパッツだの。馬鹿馬鹿しいにも程がある。
「では、君はブルマ派なんだね?」
「違う! あんなのと一緒にするな! 俺は……俺は……」
俺は……。
俺は『ジャージ派』なんだ。あのジャージの奥ゆかしさ。転んだ時にジャージを床に擦って溶けてしまったその時の表情。そしてブルマやスパッツにはないチラリズム……。その他色々。だが、こいつらのように欲望のままに声高らかにフェチニスト宣言をしては同類。
「うるさい!! 俺はお前らとは違うんだよ!」
東生徒会室に叫び声が木霊した。俺は生徒会室の扉を乱暴に開き、そして走り去った。

「ということであの馬鹿の総二郎と阿保の東条を止めようと思う」
「今更ブルマやスパッツで体育ってのも嫌だし、協力するけど……」
次の日、放課後の教室での相談相手に選んだのは同じクラスで総二郎と俺の幼馴染である横澤加奈子。活発な性格で女子生徒からの評価が高い。長い髪を両サイドの中腹で縛っており、スレンダーで身長は女子平均よりちょっと低いぐらいである。彼女は吊り気味の目を細くして続けた。
「でも、どうやって止めるの? 東南生徒会に対抗できる手段なんてあった?」
「中央生徒会を立ち上げる」
「……そういえばそんなのがあったような……」
中央生徒会とは、東南生徒会が暴走したときに有志によって作ることができる生徒会である。ただし、中央生徒会からは校則を作ることはできない。抑止のためだけに設立していいことになっている。一応システムとしては最初からあったらしいが、今までまとも機能したことがあったのかは微妙。言ってしまえばザルシステムだったようだが、今回はこのシステムに頼らせてもらう。現行の制度では女子が体育時に着用する衣服はジャージとなっている。つまり、ジャージ派の俺としては現状維持さえできればいい。俺がジャージ派ということはもちろん加奈ちゃんには秘密……のつもり。
「ここで有志を募って二人を妨害する。あいつらは男子票は獲得できるだろうけど、男子の票は取り合いになるし、女子票は消去法でしか集められないだろう。そこで俺たちが浮遊した女子票を集められれば、約五割の票を確保できる」
「どっちにも入れたくない女の子の票を横取りしちゃうって寸法ね!」
加奈ちゃんの声が明るくなる。うまくいけば東南生徒会は男子票の取り合いになって自滅する。もし偏ったとしても、こちらが女子票の大多数を抑えられればこちらを超えることは敵わないはず。
「ということで、女子への手回しはよろしく頼むよ」
「任せなさい! で、宏樹はどうするの?」
「俺は明日から校門前演説でもしてみるよ。少しでも票を増やしておきたいし……男子の票も集められるかもしれない……」
「オッケー。じゃああたしも応援に行くわね。宏樹だけじゃあの二人に押されちゃいそうだし」
「ん……あ、ありがとう。助かるよ」
正直、一人で人前に立って喋る自信はないし、確かにあの二人相手だと俺一人じゃ追い出されそうだ。二人とも遠慮ってものを知らないからな……。その点、加奈ちゃんが居れば安心だ。
「ぶっちゃけ一人じゃ頼りないし」
「……ご足労オカケシマス」
そんなこんなで適当に明日以降の打ち合わせをした後、解散した。

次の日、登校する生徒もまばらな薄ら寒い秋の朝の中、俺は中央生徒会の横断幕を掲げ、たすきをかけ、校門から入って中ほどの所に立っていた。さぶっ……。やはり秋にもなると朝は冷える。
「おー、よう! 宏樹! ってなんだその格好」
総二郎が若干ふらふらしながらやってくる。眠たそうだ。
「お前らの野望欲望を阻止するために中央生徒会を立ち上げた」
最初はポカーンとした顔で「あー……」と言っていた総二郎だったが、ややすると「えっ! まじで!?」と目を見開いた。
「おうふっふっふふっひっひっひっ……つまりお前は今日から友と書いて好敵手、ライバルということだな!?」
「いや、まず友達じゃないし」
「ふっ……そうだな! 兄弟!」
「私は一人っ子です」
「義兄弟?」
「桃の木の下でお前と杯を交わした記憶はないぞ」
「穴?」
「お前もう帰れ! つーか土に還れよ!」
全く……総二郎はいつもこうだから困る。
「おー大原君じゃないか。どうしたんだい、こんな朝早くから……」
今度は東生徒会会長のお出ましか。
「んー? ちゅうおう……中央生徒会!? これって……これってまさか……」
「そのまさかだよ。お前らの馬鹿げた規約を通すわけにはいかない」
「大原君……君には幻滅だよ……。どうして僕らの崇高なる体操服理念がわかってもらえないんだい? どうして僕らの邪魔をするんだい? 正直、ブルマ派の鈴川につくならまだわかる。 しかし、君のその行動はなんだ? 夢も希望もない。 何が君をそこまで掻き立てるか僕には理解できないよ!」
東条にはジャージの良さが理解できないらしい。理解されれても困るが。
「お前らには説明しても一生わかんねえだろうけどな、俺にも守らなきゃならないものがあるんだよ!」
我ながら台詞だけはかっこいいと思う。
「いや、しかしだね大原く……」
「なーにをやっとるかー!」
「ぐべしっ」「うわちょおま」
二本に束ねられた髪が激しく宙を舞う。勢い込んで飛び蹴りをかましたのは加奈子。蹴られて吹っ飛んだのは総二郎。そして巻き込まれてさらに総二郎の下敷きになったのが東条。
「まったく、こんなん蹴っとけばいいんよ! 言ってもわからないんだし」
相変わらずパワフルガールですね加奈子ちゃんは。そのパワフルさをちょっとだけわけて頂きたい。
「いてて……おい、早くどけ! 鈴川!」
「加奈子め……腕……いや、足を上げたな……ふふふ……」
「何をしみじみと言っているんだ貴様は! あと、そのちょっと上手いこと言ったみたいな顔でこっちを見るな気気色悪い!」
あそこの野郎二人は折り重なって何を言い合っているのだろうか。早く立てばいいのに。
「二人とも、邪魔をするつもりなら暖陽高校選挙法違反でしょっ引くけど。何か言うことは?」
「いい蹴りだったぜ! 加奈!」
罵声と共にもう一度蹴られた総二郎の顔はどこか楽しそうだった。そして東条はまた総二郎の下敷きになった。

その日からは投票の日まで毎日選挙活動をした。加奈ちゃんは人脈を生かして休み時間ごとに教室をまわったりしていたようだし、俺は毎朝校門で立って演説や広報をした。やはりブルマもスパッツもはきたくないという女子生徒は多いらしく、加奈ちゃんの助力や根回しもあってか、女子のみんなはわりと好意的だった。そして、やはりというべきか男子らからはわりと批判されたが、たまに賛同者もいたようで嬉しかった。

そして規約選挙投票日当日。6時間目を潰して全校集会を開き、応援演説と会長による最終演説の後、教室にて投票される。今は5時間目だが、流石に緊張してきた。
「えー、ということで点pの座標が出て……ん、なんだ鈴川」
総二郎が珍しく手を上げていた。
「具合が悪いので保健室行って来ます!」
そんな元気の良い病人がいるか。
「あー、選挙前だとお前でも緊張するのか。よし、行って来い。一人でいけるか?」
そんな繊細な奴ではないことは俺がよく知っている。絶対に緊張だけはない!
「はい、大丈夫です!」
「なら気をつけて行って来い。なるべく静かにな。で、点pが出たら次はこの点qも……」
先生は授業に戻ってしまった。それにしてもなんだ、あいつ。サボりか?

6時間目。俺と加奈ちゃんは全校集会が始まるまではステージ横の控え室で待機していた。中央と東南で分けられているらしく、俺と加奈ちゃんの二人しかいない。
「流石のあたしでも全校生徒の前だとちょっと緊張するなぁ」
加奈ちゃんは「うー」と言いながら演説内容を書いた紙と睨めっこしている。
「あのさ、加奈ちゃん」
「うん、なにー?」
「ありがとう。今まで本当に……」
「え、い、いや、あははは、お互い様よ! それに、ありがとうは開票後に勝ってからいいなさい!」
彼女の純真さが心苦しい。だって俺も本当のところはあいつらと変わらないのだから……。
「あのさ、実は……俺……加奈ちゃんのこと」
騙してたんだ。実は俺、ジャージ派なんだ……。彼女にだけはこの事を言わないといけないと思った。
「「お待たせ致しました。これより規約選挙演説会を行います。」」
しかし、タイミングの悪い放送に俺の言葉は中断された。
「宏樹! その続きは全部終わってから! ……ね?」
 口を人差し指で遮られる。
「あ、う、うん。そうだね」
まぁ今言うのは得策じゃないしなぁ。何を焦っているのだろうか俺は。
「「では、まず南生徒会の……え? あー…………はい……。失礼しました。では中央生徒会の応援演説からよろしくお願い致します」」
「……? 南生徒会で何かあった?」
「総二郎の奴がまだ保健室から戻ってないのかも……」
「へー珍しい。馬鹿でも風邪引く時は引くんだ」
「確かに珍しい……」
でも、あれは仮病じゃなくて、本当に具合が悪かったってことか……。疑って悪かったな。あいつには後でジュースでも奢ってやろう。
「そんじゃ、行って来ます!」
「うん、がんばって」
俺は親指を上に立てて笑って見送った。彼女も親指を立てて笑って返してくれた。

「中央生徒会副会長、横澤加奈子です」
控え室に居ても声は聞こえるけど、前からは見ることができず、彼女を真横からしか見守ることができない。
「今回の体操着の改変に反対するために、私は大原会長の補佐及び、応援者として演説させてもらいます」
だけどその凛々しい横顔は誰よりもカッコよく見えた。まぁ本人にカッコいいって言ったら怒られるだろうけど。
「まず、私を含め、大部分の女子生徒は改変を望んでいないと思われます。体育時にブルマ、ましてやスパッツを強制するなんていうことは馬鹿げています。しかし、これだけでは個人的な感情にしか過ぎません。なので、私が個人的に聞いて回りました。その結果、体操着改変の賛同者は得られませんでした。個人的にとは言いましたが、様々なルートを経由して全校の女子生徒の半分ぐらいの人は改変を望んでいないと思われます。それに新たに体操着を調達するとなると、金銭的にも負担が生じます。現状のままでいいのにそんな余計な所で負担を増やしていいとは思えません。もし、私に賛同してくださるなら大原会長へ清き一票をお願いします」
拍手喝采。ステージからちょっとのぞいた感じだと、特に女子生徒からの拍手が大きかったように思えた。人望あるなぁ。
「「ありがとうございました。次は中央生徒会会長から演説をお願い致します」」
壇上に向かい、加奈ちゃんとすれ違う時「お疲れ」と言ったら「頑張り!」と返ってきた。壇上のマイクの前に立つ。うう……全校生徒の前だと緊張するな……。
「中央生徒会会長。大原宏樹です」
手から汗が溢れる。とりあえず今まで練習してきたんだ。あとはやるしかない。
「体育時にはブルマ又はスパッツを強制する。そんな横暴な話があっていいわけがないと思い僕は中央生徒会を立ち上げることにしました。自分ひとりだけだった場合はきっと上手く運営できなかったと思います。これもひとえに横澤さんを初めとする多くの協力者の皆様方のご指導とお力添えのおかげと深く感謝申し上げます」
ちらっと横を見ると加奈ちゃんが口ぱくで「がんばれ~」といっているような気がした。
「僕がやりたいことは生徒会の理不尽な非道を阻止することです。僕が中央生徒会を立ち上げなければ体操着はブルマかスパッツかの二択しか選択肢がありませんでした。この投票の結果によっては僕が中央生徒会を立ち上げたことは無意味になるかもしれません。ですが、僕は東南生徒会の権力の暴走を黙ってみてるわけにはいきませんでした。もし、体操着の改変に反対の人がいればよろしくお願い致します。ありがとうございました」
加奈ちゃんほどではないにしろわりと拍手をもらえたから悪い反応ではないようだ。実はジャージが好きです! とは流石に全校生徒の前では言えなかった。そんな俺をチキンと罵るなら罵ればいい。
「ありがとうございました。次に南生徒会から応援演説をお願い致します」
戻ると一気に気が抜けた。なれないことをするもんじゃないな。
「お疲れ~……え?」
「どうしたの加奈ちゃん」
「なんで東条が立ってるの!?」
「え、あいつは東生徒会じゃ……」
ステージからのぞくとマイクの前では東条が喋っていた。そういえば総二郎は相変わらず校門前で演説をしていたが、東条はあれ以来広報発動をしているところは見かけなかった。まさか、ブルマ派に統合したのか。これじゃ票が割れない。
しかし、いまさら焦ったところでどうしようもない。もう自分の番は終わってしまったのだからあとはもう見守るしかない。
「……など、運動のしやすさなども考えられており、ブルマは極めて機能的な衣服だと言えます」
わりとまともっぽいことを言っているようだが、それだけじゃ女子の票は揺るがないと思う。
「ところで皆さんは今、原宿や青山では男の間にスカートが流行っているのは知っていますか? お洒落の最先端とも言える場所でなぜか急にスカートが流行っている事実。つまり、世間の評判、評価というものは常に変わる。ブルマが今後流行らないとも言えません!」
関連性のないことをさも関係があるかのように……。
「実際、マスメディアが取り上げていないだけでブルマは流行りつつあるという見方が定説になりつつある。僕は我が校の生徒を時代遅れの制度に取り残したくない一心でこの改正に踏み切りました」
情報ソースがない。信憑するに値しない。あと、お前はスパッツ派だろうが!
「ジャージなどという古い固定概念に囚われていては我々は時代に取り残される一方だと思われます」
いや、ブルマが古いんだよ。逆だよ。
「ブルマが認められない限り、我が校は進歩しえない! よって僕は体操服にはブルマを推奨する! 以上です。ご清聴ありがとうございました」
そして拍手。おいおい女子までわりと拍手してるぞ。やばいかもしれない。
「これ、詭弁の見抜き方……か……」
「何それ?」
「いや、そういった詭弁をまとめたものがネット上にあるんだけど、それを逆に利用してくるとはなぁ……」
まずい。何がまずいってこっちはもう演説が終わってしまってるし、この演説が終わったらもう生徒会からは生徒に介入できない。詭弁を詭弁と見抜ける人はいいが、素直な人には信憑性のある言葉に聞こえてブルマ派に流れる危険性がある。まさか、あいつらわざと先に演説させたのか。
「「ありがとうございました。次は南生徒会会長から演説をお願い致します」」
大またで歩いて来た総二郎が置くタイプのマイクを持ち上げた。ある男子生徒らからは「鈴川ぁあ!」と掛け声がかけられた。大した人気だな。
「俺がいいたいことはただ一つ! ブルマがいいと思う奴は俺に入れろ! 以上! センキュ!」
ドン!とマイクを置くと男子どもは立ち上がって拍手喝采。「うおー」と叫んでいる奴もいる。一方女子生徒は大半がきょとんとしていて拍手もまばらだ。
「「あ、ありがとうございました。えーと、東生徒会は辞退ということで、これにて規約選挙演説会を閉会いたします。生徒の皆さんは先生がたから指示があるまでその場で待機していてください……」」
こうして俺たちの規約選挙は終った。

開票日当日。
「おい、東条、何故ブルマ側についた」
こいつが普通に規約選挙に出てれば、こっちの圧勝だったはずなのに……。
「スパッツだけでは分が悪いと判断して、ブルマ側につくことにしただけさ!」
眉毛をVの字にして威風堂々キリッとして言った。
「総二郎の仮病はお前の入れ知恵か?」
「ふふ、まあね。先に演説することになったら博打もできなかったから彼にはストレス性の腹痛に襲われたふりをしてもらったよ」
勉強だけじゃなく、こういう知恵もよく回る。投票結果は僅差で負け。くやしいが、まぁもう終わったことだ。結果は甘んじて受け入れよう。そう思った。規約選挙後の初体育までは……。

「どうしてこうなった……」
規約選挙後の初体育。煌く太陽、瑞々しい女性陣の太股、そして紺色のブルマ。
「うっかりなんだぜ☆」
総二郎が憎い。あいつの輝く白い歯とさわやかな笑顔が俺の神経を逆撫でする。
あの野郎は公約をこう掲げていた。
――我が校の生徒は例外無く体育時にはブルマを着用することとする――
野郎どものすね毛だらけの足、足、足。生足! 総二郎が『女子生徒』とするところを『生徒』と表記してしまったが故の過ち。そう、体操着ブルマ化は女子限定ではなかった。野郎どもとて例外なく紺のブルマをはくことになった。はっきり言ってキモイ。まずすね毛が気持ち悪い。生足がきもい。股間の部分は無駄にブーメランパンツをはいた時のように盛り上がり、さらにきもさを増大させている。さらにそんなのが集団で存在するのだ。きもさ人数倍どころの騒ぎではない。きもさ人数乗、累乗だ。そしてとどめは自分もそんなきもいブルママンの一人という事実。
「やっぱり体育といったらブルマだよな!」
「死ね……。百万回死んで百万回生き返って百万と一回目で死ね」
総二郎に呪いの言葉をぶつけても俺のジャージは返ってこない。でも言わざるを得なかった。
「まぁそう怒るな大原君! ブルマも慣れれば案外快適だぞ!」
まるで初めから「体育の時はブルマでした」みたいな顔で軽やかにステップを踏むブルマ東条。ついでに足も踏んでやる。
「うおぉおおっ! あべしっ!」「ぐえっ」
盛大にこけた東条とそれに巻き込まれた総二郎の両方を交互に踏みつける。二度と笑ったりはしゃいだりできなくしてやるにはどうすればいいのだろうか。わりと真剣に悩む。
「おーい! 宏樹ーん、と馬鹿と眼鏡。だいじょーぶ?」
体育の合間に加奈子ちゃんがこちらの様子を見に来てくれたようだ。スレンダーな体系も相まってすらりと伸びた足がブルマによって強調されて一種の芸術と言っても過言ではないかもしれないけどけどやっぱり過言のような気がしないでもないけど、ブルマさんの仕事の良さに感服した。ブルマさん、グッジョブです。
「……ブルマも……いいかもしれない……」
感動のあまり、思わずそんな言葉が出た。
「お前もなかなかわかってきたじゃないか」
「ウエルカム、歓迎するよ大原君」
今ならこの馬鹿どもと一緒に肩を抱き合い、笑いあえる、そんな気がする。秋ももう秋刀魚が旬を過ぎたあたりの季節だった。俺は少し寂しい感じの秋の空をブルマと共に仰いだ。
「それにしても、ぶっ……そのブルマ……宏樹も総二郎も東条も……やっぱり気持ち悪っくっぐっ……あっはっはっはっは。いや、もう駄目我慢できないぃいひっひっひっひ。だって何それダサすぎっひっはっはっはっは」
俺はやっぱり馬鹿阿保二人を殴った。彼女の可笑しそうな笑い声で寂しげだった空が少し色づいた気がした。

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  1. 2009/10/09(金) 13:48:45|
  2. 雑記
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